多くの人は、十分な睡眠時間をとっていれば、美容と健康の上で問題がないと認識しがちです。しかし、睡眠で大切なのは、時間だけではありません。いくら睡眠時間が長くても、睡眠の質が悪ければ、睡眠障害と同じような不調が身体にあらわれてしまうのです。以下では、睡眠の質について解説していきます。
目次(ΦωΦ)v
●そもそも睡眠の必要性とは?
日常生活において、私たちの脳や身体は常にフル回転しています。睡眠には、そんな日常生活で蓄積された脳や身体の疲れを解消する効果があります。
また、睡眠は身体の発育やアンチエイジングにも効果をもたらしてくれます。睡眠中に分泌される成長ホルモンには、身体の成長を促す働き、傷ついた皮膚やその他器官を修復する働きがあるのです。
このほかにも、睡眠にはストレスを緩和させる効果、病気を予防する効果、記憶を定着させる効果などがあり、健やかな身体活動を送る上で必要不可欠なものとなっています。
●睡眠本来の効果を得るためには時間と質の両方が重要
上記でご紹介した睡眠の効果を得るためには、まず、十分な睡眠時間を確保することが大切です。睡眠時間が不十分で睡眠不足になると、ストレスや肥満、慢性疲労や情緒不安定など、身体に様々な不調が起こるようになります。
では、睡眠時間をしっかり確保できれば、睡眠本来の効果を得ることができるのかといわれると、そうではありません。睡眠本来の効果を得るためには、睡眠時間に加え、睡眠の質にもこだわる必要があります。
睡眠には、“質の高い睡眠”と“質の低い睡眠”の2種類が存在します。前者の質の高い睡眠とは、いわゆる熟睡のことです。深い眠りにつけることから脳と身体を効率良く回復させることができ、睡眠本来の効果を得ることができます。それに対して、質の低い睡眠では、浅い眠りのために脳や身体が十分に回復できず、しっかりと睡眠時間を確保できていても、身体に何らかの不調があらわれてしまいます。
●睡眠の質には“レム睡眠”と“ノンレム睡眠”が関与している
私たちが眠りについているとき、レム睡眠とノンレム睡眠が交互に繰り返されています。レム睡眠は浅い眠り、ノンレム睡眠は深い眠りを意味し、約90分ごとにレム睡眠、ノンレム睡眠が起こります。
このレム睡眠とノンレム睡眠のうち、質の高い睡眠と深く関与しているのが、ノンレム睡眠です。脳や神経が活動状態にあるレム睡眠に対し、ノンレム睡眠では脳や身体の活動が休まり、ゆったりとした状態になります。そして、ノンレム睡眠には、1段階、2段階、3段階といった深さがあり、より深いノンレム睡眠に入れたほうが、脳と身体の回復力が高まり、睡眠本来の効果を得やすくなります。
「睡眠時間さえしっかり確保しておけば、睡眠の質なんて関係ないのでは?」という方もいるでしょう。しかし、それは大きな間違いです。質の低い睡眠は、身体の美容と健康に悪影響を及ぼしてしまうのです。
以下では、質の低い睡眠によって身体にどんな悪影響が及んでしまうのかをご紹介します。
●免疫力の低下
免疫力をつくりだす免疫細胞は、ノンレム睡眠時に生成されます。睡眠の質が低く、深いノンレム睡眠につけないでいると、免疫細胞が生成されにくくなってしまい、免疫力の低下につながってしまいます。
免疫力が低下すれば、風邪をひきやすくなる、疲れが溜まりやすくなるなど、身体の健康面に悪影響が及んでしまいます。
●便秘
脳と腸は神経でつながっているため、質の低い睡眠によって脳の休息が不十分になると、腸の働きが低下し、腸内環境の悪化によって便秘になることがあります。
慢性的な便秘でお悩みの方は、睡眠の質が低下している可能性があるため、今からでも対策に取り組みましょう。
●月経痛や月経周期の乱れ
睡眠の質が低いと、女性ホルモンの分泌力が低下し、月経痛や月経周期の乱れといった女性ならではのトラブルの原因にもなります。
●肌トラブル
肌の再生を促す働きもある女性ホルモンは、別名“美肌ホルモン”とも呼ばれています。上記でもご紹介したように、睡眠の質が低いと女性ホルモンの分泌力が低下してしまうわけですから、ニキビや肌荒れといった肌トラブルの治りも遅くなってしまいます。
●肥満
深いノンレム睡眠につくことができれば、エネルギー消費を促すレプチンというホルモンの分泌が促進されることで、ダイエット効果を期待することができます。反対に、質の低い眠りにつくと、食欲を増加させるグレリンというホルモンの分泌が高まってしまい、肥満の原因につながってしまいます。
また、脂肪燃焼効果がある成長ホルモンの分泌力も低下してしまうため、脂肪が蓄積しやすい身体になってしまいます。
●吐き気やめまい
質の低い睡眠では、脳や身体に疲労が残った状態となり、身体の中に乳酸や疲労物質が蓄積していきます。質の低い睡眠が長期的に続けば、それらの物質が各器官にも影響を及ぼすようになり、吐き気やめまいといった不調が起こりやすくなるのです。
●目覚めが悪くなる
睡眠の質が低いと、脳や身体が十分に回復できないため、朝の目覚めが悪くなります。十分な睡眠時間を確保しているにも関わらず、起床時に疲れやダルさを感じるという方は、質の低い睡眠をとっている可能性が高いです。
睡眠の質が低下する主な原因は?
質の高い睡眠をとるためには、まず睡眠の質を低下させる原因を解消することが大切です。
ここでは、睡眠の質を低下させる主な原因について解説していきます。
●寝る前の食事
寝る前に食事をすると、眠くなりますよね。このメカニズムを利用して、何かを食べてから寝ようとする方は意外と多いようです。しかし、食後すぐに寝ると、食事で摂取した食べ物の消化・吸収によって胃や腸の休息時間がなくなってしまうことから、睡眠の質が低下してしまいます。
また、夕食の食べ過ぎも、胃や腸に大きな負担を掛けてしまうことから、睡眠の質を低下させてしまいます。食事を摂るときは、満腹になるまで食べず、腹八分目を意識しましょう。
●寝具との相性
敷布団やマットレス、布団や枕との相性が悪いと、寝返りの回数が増えることによって深い眠りにつきにくくなり、睡眠の質が低下してしまいます。睡眠の質を高めるためにも、寝るときには自分が快適と感じる柔らかさ・大きさの寝具を使うように心掛けましょう。
●ストレス
ストレスが溜まっていると、頭の中で余計なことばかり考えてしまい、脳や神経が緊張状態になります。すると、入眠するのにも時間が掛かってしまうことから、深い眠りにつきにくくなり、睡眠の質の低下につながってしまうのです。
とはいえ、ストレスが溜まっているときは、どうしても頭の中で色々と考えてしまいますよね。考えるなといわれても、無意識に考えてしまうものはどうしようもありません。アロマやヒーリング、マッサージなどのリラクゼーションを利用して、なるべく寝る前にストレスを感じないように対策してみましょう。
●スマホやテレビ
スマートフォンやテレビの画面からは、ブルーライトと呼ばれる可視光線が放たれています。このブルーライトには脳を覚醒させる効果があり、スマホやテレビを見ながら寝ると、脳が覚醒したまま眠りについてしまうことになります。その結果、ノンレム睡眠が起こりにくくなり、睡眠の質の低下につながってしまうのです。
●カフェイン摂取
コーヒーなどに含まれるカフェインには、脳を覚醒させる作用があります。このため、日中や寝る前に何杯もコーヒーなどを飲むと、カフェインの作用によって脳が興奮状態となり、深いに眠りにつきにくくなります。睡眠の質の低下を防ぐためにも、カフェインを含む飲み物の飲み過ぎや飲む時間帯には注意が必要です。
睡眠の質を高める方法とは?
「しっかり寝ているのに疲れがとれない」「常に眠気を感じる」このような方は、睡眠の質が低下している可能性が高いです。
以下の対策を実行して、睡眠の質を向上させていきましょう。
●睡眠欲を溜める
睡眠の質を高めるためにも、起床してから就寝するまでの時間において、睡眠欲を溜めておきましょう。中には、日中の眠気に負けて仮眠をとるという方もいますが、仮眠をとると睡眠欲が半減し、深い眠りにつけなくなります。深い眠りにつくためにも、朝起きてから就寝するまでの間は、仮眠をとらないようにしましょう。
●寝る前には身体をリラックスさせる
睡眠の質を高めるためには、寝る前から脳や身体を落ち着かせ、休息しやすい状態に整えておくのも良いです。テレビやスマホを見る、激しい運動をする、熱いお湯に浸かるといった脳や身体を興奮させるような行動は控え、ハーブティーを飲む、ストレッチをする、照明を暗くするなどして、脳と身体を就寝モードに落ち着かせてあげましょう。布団に入った瞬間スムーズに入眠でき、深い眠りにつきやすくなります。
●アプリを使う
スマートホンのアプリの中には、睡眠の質の向上に役立つものが多数存在します。快適な眠りにつけるアプリ、正常な睡眠周期に整えてくれるアプリなどがあり、こういったアプリを使って睡眠の質の向上を図ってみるのも一つの手です。リラックス効果の高いBGMが流れるアプリも、脳や身体の緊張を解きほぐすのに役立っておすすめです。
●身体を動かして疲労を溜める
1日中ダラダラ過ごしていたりすると、脳や身体に疲れが溜まりにくくなって、睡眠の質が低下してしまいます。身体を動かして疲労を溜めたほうが深い眠りにつきやすくなり、睡眠の質の向上を図ることができます。
とはいえ、激しい運動をする必要はありません。ウォーキングやサイクリングといった日常生活に取り入れやすい運動でOKです。運動をする時間がないという方は、寝る前にストレッチやヨガで軽く身体を動かしてみることもおすすめです。
短い睡眠時間でも睡眠の質は向上する?
睡眠本来の効果を得るためには、時間と質の両方が重要というお話しました。しかし、睡眠の質が高ければ、短時間睡眠でも睡眠本来の効果を得ることができるのをご存知でしょうか?
ここでは、睡眠の質と睡眠時間の関係について解説していきます。
●睡眠の質が高ければ6時間睡眠でもOK!
極端な話、睡眠の質さえ向上させてしまえば、短時間睡眠でも脳や身体の疲れを解消することは可能です。
日本医師会におけるデータでも、入眠時すぐに訪れるレム睡眠とノンレム睡眠(90分)、次に訪れるレム睡眠とノンレム睡眠(90分)、そして3回目のレム睡眠とノンレム睡眠(90分)、4回目に訪れるレム睡眠とノンレム睡眠(90分)の計6時間(360分)の睡眠時間で脳と身体の休息を図ることが可能とされています。
このため、睡眠の質さえ高ければ、睡眠時間がなかなか確保できないという人でも、睡眠本来の効果を得ることができ、身体の美容と健康の維持を図ることが可能といえます。
●レム睡眠とノンレム睡眠の仕組みで目覚めが快調に?
レム睡眠とノンレム睡眠の90分サイクルの仕組みを理解すれば、朝起きるのも楽になります。
たとえば、深い眠りについているノンレム睡眠時に目覚まし時計が鳴ったとします。すると、脳や身体は完全に休息していたこともあって、目覚めるのに時間が掛ってしまい、身体にはそれがダルさとしてあらわれてしまいます。反対に、レム睡眠時に目覚まし時計が鳴ったとすると、脳や身体が覚醒状態にあることから、スッと目覚めることができます。このため、朝起きるのが苦手な人は、就寝時間からレム睡眠とノンレム睡眠の1セット90分の倍数となる時間帯に目覚まし時計を合わせてみましょう。レム睡眠時に目覚ましが鳴るので、起床時の目覚めが良くなりますよ。
多くの方は、睡眠の質よりも睡眠時間にこだわりがちです。たしかに、睡眠時間をしっかり確保したほうが身体の美容と健康にとっては効果的です。しかし、睡眠時間にこだわり過ぎて、睡眠の質を疎かにしていては、せっかく確保した睡眠時間が無駄になってしまいます。
今回ご紹介したレム睡眠とノンレム睡眠の仕組み、睡眠の質を低下させる原因や対策などを参考に、是非睡眠の質の向上を図ってみてくださいね。睡眠の質が向上すれば、短時間睡眠でも疲れを感じにくくなり、日々の身体活動における活力もアップして、より充実した毎日が送れるようになるはずです。